晴耕雨読の日々

我は動かぬ石かはたまた空を貫く風となるか、時折徒然を呟く

強くなりたい

【 詩・俳句 】

ドビュッシー『夢』
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遅くまでの仕事
夜半の月は欠けて
わたしの影を照らす
家路に着くまでの
薄闇の電車に乗る
たった二駅の時間
わたしは弱虫だって
過ぎ去る街並みの灯り
笑ってわたしを見過ごす
一人っきりになると
大切な人を失ったこと
思い出したり消えたり
幾年の出来事は束の間の夢
素のままの自分を預ける
拠りかかって縋る礎となるもの
あなたがいるからこそ
見えはしない明日を迎える
わたしは強くなりたい

この詩「強くなりたい」はちょうど10年ほど前
に書いた記憶があります。
誰かに託したのかは忘れたけれど今よりは
間違いなく率直な情感が記されています。

句座に集まる人たちの句をタイプしていくに
つれこの詩を添えたいと思ったのは何故かな。
きっとわたしが出来ることはこれくらいのこと。
みんな誰もが皆。精一杯に生を全うしています。
この精一杯を今月も公開してみます。

ありたけの賛辞を受けて雪だるま

二人居の約束違ふ吹雪かな

別々の枕抱えて冬うらら

家中の真実白き日脚伸ぶ

言い出せず永き一日冬晴るる

諦観の揺るぐことなく寒の雨 

降雪を被りて真白鳥一羽

踊躍歓喜とっさ跳び出す雪の庭 

庭の樹の冬芽ふくらむ白き朝

大寒の閑暇夢幻を駆け巡る

まだ暗き道都にささら電車の灯

雪道の細く踏まれし開拓碑

月氷る螺旋階段昇りゆく

筒雪や影を集むる炉端の火  

空高く一羽の鷹の爪光る
   
玻璃越しの雪は降りしき車輪跡

雪や降るまだ人住まぬ太古より 

寒木瓜や朱の一灯を我が家まで

かすかなる雪の音して宙を割る 

白菜のざくっとこの身開ける音

初神籤足どり軽き家路かな

雪しまく道無き広野踏み出さん

六十路越え今ゲレンデの風になる

杣木引く愛馬の放つ息白し

凍ての日々機嫌いかがと暁烏

白銀の空気すらりと葱の中

寒月や幹に忘れし藁箒

手袋を脱げば蠢く握り皺  

玄関で思案新聞休刊日

英字紙にポインセチアの包まれて

深山の滝落ちるまま凍りけり

酩酊に冬の風吹く路傍かな 

うたた寝の屋根の隙間に冬の月

大寒の外気を細く吸ひにけり  

凍星の薄き刃の光かな  

なやらひの鬼はあまりに強すぎる

寒紅をふた色重ね仕上げたる

七草や口に異なる苦味あり

家元の言葉少なき寒稽古

寒薔薇の花の形の整はず


拍手があれば嬉しいな
   
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愛はかげろうのように

【 愛 】

I've Never Been To Me (愛はかげろうのように)
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シャーリーンが唄う曲。
耳にすると少し前のことだと思いながら
随分歳月が流れているのに気づく。

時は移ろいの中にあると思い浮かべてた
のはまだ二十歳に満たない頃である。
ほろりと泣かす恋愛詩をするりと描く少年。

そうかいつの間に歳月は自分の中にある。
口惜しいことは何もないようにと誓っていた
癖にするりと逃げていったこと。

愛はかげろうのように過ぎ去る。
掲画の水彩は絵筆を取り始めて一年後
くらいに描いた気がする。

いつかゆっくりこの景色の前に立ちたいと
直向きに筆をとった時間。
目くるめく情熱を傾けて実現できたこと。
いつまでも続くと少し遠ざけて失うモノ。

時は移ろいの中にある。
そんな移ろいの中にあっても息づくもの。
仲間たちの佳句を届けたい。


真っ新の手拭乗せて雪見風呂

後悔の先に暮れゆく師走かな

「がらくた」と書かれた袋雪積もる

香焚きて煙のままに年暮るる

珈琲の似合ふ一夜の第九かな
  
守らるる小さき山茶花揺るぎなし 

まあるくて黄の風に揺る蜜柑かな

朝の日を浴びて迎えの布団干す

何せむと思ふばかりの暮早し

主待ち留守居してます寒椿
  
供花手に戻る家人の年用意

浅き夢みし白雪の乙女像

菜を洗ふ手繰る腕の赤くして

寿ぎの電話に弾む姉の声  

松とりて番茶に浸る老眼鏡 
   
冬灯廃線近き駅舎かな

山茶花や登校の声やがて散る

己が炎を掻き立てながら初茜

短日の思ひの一つ届かざり

枯蓮や戦い終える姿なり

刺すが如冷たき手水浅草寺

人波に逆らふままに大晦日

賀状来る慣れぬ名字の友増えて

寒天に雷門の赤冴えし

新宿の街闊歩せり寒鴉
  
冬ざれの丘に続きし獣道

梟は字のごと洞に住まひけり

絵手紙の青き海まで師走かな

研ぎ立ての包丁並ぶ年用意

雪閉ざす原野を捨てて街に住む

ドアノブに小さきメモの味噌大根

冬牡丹天地一切開け放つ  

狐火と見てきた嘘も父のこと

手袋を脱ぎ拍手を響かせる  

みほとけは祷りに痩せて冬日向  

闇を狩る黒目ばかりの梟かな

ぶつかりて曇り硝子に冬の蠅

神棚を妻と清める師走かな

岩牡蠣の固き鎧を脱いでみよ

図書館の小さき咳する女ゐて

ざざぶりの冬の雨らしからぬ朝

一陣にちょうど十羽か鳰談義

枯葎映して川の浅かりし

着ぶくれて若さ忘れてしまいそう

冬草の背丈これより伸びきらず


拍手があれば嬉しいな
   

友達のまま自然に

【 自然 】

フレンズ
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煌めいてた そして 戸惑う青春だった
争いの酒に 眠る事も忘れ
命まで賭けた 愛さえ勝てないほど
とてつもない未来に
しがみついた二人
フレンズ あれからの
フレンズ 歳月は移り気で
フレンズ とにかく今
長い時間を君に打ち明けたい


☝は高橋真梨子の唄う「フレンズ」。
ブログのタイトルの誘因なのです。
写真はパリの公園で撮った仲睦まじい老夫婦。
片言のフランス語で「撮らせてください」とお願い。

レンズに向って優しい笑みを返してくれる。
カメラを始めて既に25年の月日が流れるが
人物を撮ることは滅多にないはずがこの写真
だけはいつまでもファイルに残る。

何故なのかはフレンズの詩に書いてある。
ずっと今も「友達のまま自然に」。
久しぶりに回顧の時間。
先のことばかり片付けようとしていると
大切なモノやことを見失う。
ちょっと振り返るだけでホンモノが見えてくる。
俳句のフレンズたちも同じに句を詠んでいます。


留守番の屋根に張り付く霜夜かな

凍空にまろく吐息の恋のうた

大柄の襟巻ふはり空元気

生き様を書きあぐねたり雪明り

二股の路地に問いかけ散り紅葉

夕日さす里の田野の忘れ花

闇の灯に健気な笑みよ冬薔薇

今年また冬の向日葵此処に来て

弔いの和服の人よ村時雨 

冬温し風の泳がす一葉かな

文机の傷を増やして一葉忌

問ひかけて応え返らず冬薔薇

壁掛けの天使今宵の雪知らず 

冬帝の気まぐれ忍ぶ大銀杏 

踏みゆかば雪啼く声の道となる 

通り過ぐ柊の香を纏ふ家

冬桜出逢ひて淡く別れゆく

この想ひこころに抱き冬の雲

初時雨やがて水面の騒がしく

メニュー表未だ定まらず冬ぬくし

木枯やバス停の前通り過ぐ

銀杏散る雲一つ無き晴れの日に

数え日の成すべきことを成せぬまま

あれこれと買うて少なし賞与かな

開拓の石碑残され枯野原

初雪の人恋しくて受話器取る

冷たき右手ポケットに誘われて

コンサートチケット買うて寒昴

凍空の音無き音に耳澄ます

落葉掃くハートの形に誰がして

ヨブ記読む暖炉の炎衰えて

褞袍着て嘘の愛想も身につけて

マフラーして私が綺麗だった頃

父の歳越えて父恋ふ日短か  

着ぶくれの「は」の列二番指定席  

冬めきて家路の子らの遠くなり

高ぶりて窓開け放つ冬の朝

アスファルトはぐれ狐の疾走す

朝の陽の薄き欠片や初氷

友来たり馴染みの店のおでんかな

北風のその中にある大地の音

2山茶花の平らに開く夕まぐれ

小春日や楽の目玉は一代記

暮早し人譲り合ふ橋の上

鴨くぐる池の深さのあるところ


拍手があれば嬉しいな
   

君と歩いた青春

【 徒然 】

君と歩いた青春
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今年もあとひと月半である。
何やら様々な講座を引き受けた
こともあって暦の進むこと。
不毛の時間を費やすよりは
幸せなことである。

辛い時期があってほのかな幸を
得られると誰かが教えてくれた
のだろうか。
いや、自分で実感しているのかな。

押し迫ってきたので喪中の葉書が
随分と届く。
年の近い友の幾人かが鬼籍にとの
連絡。
君と歩いた青春は誰もがあったはず
なのに相方だけが遺される。
拙作の水彩画を手向けて思うこと。

やるべきことを淡々と続けて先に
逝った人たちの分まで過ごそうと。
句会の仲間達の佳句をご披露します。

川端の寂れし標秋の音

ことし来て藁黒も吾も達者です

色葉散る隣戸の樹々も綯い交ぜに

愛おしき小さき汝ら野紺菊

友集ふ久しかりしも秋長けて
  
駐車場コインの音の冷まじき

ベレー帽見立てくれしはえんじ色

晩学の朋引き合はす黄落期  

淡々とポプラ揺るがず冬隣 

風筋を大河に連ね雁の声 
   
天翔る月の憂ひか影は濃く

ひと色に大地描きぬ山の秋

それぞれに千草の花の持つ力

地の底の盛り上がるごと虫の秋

高層の秋風一気に転げ落つ

渋柿を二つに分けて老い二人

絵葉書のピーマン語る浮世かな

ナポリタン酸味の強き秋の暮

菊人形ただ子の背を見つむ母

誰も皆タイヤ話の冬支度
 
森を越え海を伝ひて秋の鷹

点々と火の粉散らばる蔓梅擬

未来指すクラーク像や露時雨

しゃきしゃきと夜の静寂に林檎食む

鳥の来て何処に芽生えん楓の実

切干しに風の筵や石を置く  

吾木香揺れて本堂浮くごとし

寺の庭掃き残しある月の影

行平に粥の粘りや水の秋

虫鳴いて路地の深闇やはらかし

着ぶくれて演歌の街へ繰り出さん

盗み酒妻の寝息の霜夜かな

炊き立てに煮凝りのせし馳走かな

屋根ひとつ妻にもらひし流行風邪

情けには及び腰なり寒鴉

皆同じ目のらんらんと菊人形 

回廊の頭上は低き石蕗の花  

鈍色の雲動かざる時雨かな

図らずも御身の慣れて冬に入る

マフラーの今朝の話に加はりぬ



拍手があれば嬉しいな
   

月光が照らす笑顔

【 音楽・スポーツ 】

Beethoven Silence
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一年は早いものである。
三年ほど続けた子供達との剣道。
サヨナラしたのが少しの前のよう。
出来るだけ一緒にと考えていたが
二つのことができなくなってきた
御年のために断念しました。

偶に車から可愛い子供たちの様子
を見る機会があるけれど。
屈託のない笑顔は変わらないでいる。
そう思いたいのだからしようがない。
めっきり身体を動かすことが少ない
ので朝のストレッチを続けている。

まあ、齢を考えればこの上ないだろう。
この程度と考えるだけで納得したい。
子供達との別れと入れ替えの俳句講座。
大勢の方たちと一緒に句を楽しんでいる。

ギラギラでは無くキラキラとした感性を
育む手助けができたらなあ。
私自身への確かめでもある。
お膝元の仲間達もすこぶる健句である。
今月も粒ぞろいの句が揃いましたよ。

埋もれゆく手帳の余白小鳥来る

ぼた餅やずしりと母の想いほど

長き夜の人間失格読み返す

地下鉄の中に色なき風の有り

朝ぼらけアラーム止みて秋の虹

秋ひと日旅の便りや吾も此処に

息づくも実生るもがもな花茗荷 

十日夜の月は遠くも近くにも

音響をとめて聞き入る虫の声

ささやかに暮らす媼や酔芙蓉 

秋冷の山に灯を置くジャンプ台

月の夜に夢む中空土偶かな 

薄野に雨のぽつぽつ叩き初む 

年離る姉は文待つ秋燕   

菅笠の足取り軽く車夫の秋

探しゆく終の棲家へ秋の蝉

秋蝶や纏へるものをひとつずつ 

名画座のチターの音色秋ひと日 

言の葉の胸に届きて秋うらら 

父遠く想ひ熟せる新麹

秋刀魚焼く匂ひ立ち初む漁師町

あちこちに配って多き芋の秋

移ろひて同じもの無し秋の雲

忘れらる子らの朝顔俯きて

蝦夷栗鼠に案内されて秋の森
  
墓標まで野辺の送りや秋薊

行合の空分かつまで飛行雲

十勝野へ狭霧の峠越えてゆく

望郷の島遠ざけて霧襖

足音の途絶えるるると虫集く

信号を待つ一分の冬隣

音消えて空の戻りぬ威銃

靴下げて泣いてくる子や葉鶏頭

日の射して土あたらしく吾亦紅

烏瓜曳けば微かに山の音

野に伏して匂ひ残せし秋の蕗

今年こそ何にもせぬぞ冬支度

紅の蠱惑セピアの森の天狗茸

半眼の哲学者めく沢鰍

童一人ジャングルジムの朝の露



拍手があれば嬉しいな
   

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プロフィール

◎ 今人- imajin

Author:◎ 今人- imajin
湿ったアスファルトには
春風が消え夏の息吹が漂う
あの青々とした山間に棲む
コロポックルの戯れ
邪気のないことに憧れて
恋焦がれる思いを託すのさ
鈍色の空を只管仰ぎながら
何度薄暮の時間を迎えたか
長い長い冬の時間に萎れて
灯りを見出せないままの辛さ
無為の日々を過ごすことは
とてつもなく悲しい
影のように重なる自分が居て
ただその場に蹲っていた
閃光のような光が与えられて
照らし出されたわけでもなく
今を生きていることに気づく
そうさ多くは望まなくとも
森羅万象に眠る慈愛を
つまびらかに明かすが良い
葉漏れ陽に包まれて
僕は此処に居る

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

冒頭の詩は、今を生きる人
をタイトルにしています。
あまり、肩肘を張らない
タイプの人間ではあります
が、少し勢いを付けたいと
思う今日この頃。

詩のタイトルに倣って、
筆者名は【今人-imajin】
となりました。お気づきの
ように、ジョンレノンの
イマジンも模倣した訳です。

どちらかと言うと、
アスファルト・ジャングル
よりも山川に出没するのが
多いのですが、テリトリー
ではないので、吠えません。
万物万象には、畏敬の念を
忘れないようしています。

ただ自然の中にあるエナジー
は、日々の暮らしの糧になり
ますので、ちょいと拝借を
しています。
その場で文筆や写真・水彩の
記録をさせてもらってます。

その時折の呟きやら写真・
水彩画などを掲載するつもり
でいます。お訪ねのあった
機会には、拙い散文の背景や
行間を探ってみてください。

筆者として望外の喜びです。
よろしくお願いします。

連絡先はこちらに
banshow114☆yahoo.co.jp
☆を@に変えてください

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